平成18年の5月1日より「株式会社」に関する法律が改正され、以前は最低1000万円用意しなくては設立できなかった株式会社は、今や「1円」からでも設立できるようになりました。
IT起業など限界コスト0円でも利益を上げていくことがまさにIT時代ですが、実際に今からインターネットをメインに活用した起業を考えていくと、一体どのくらいの初期費用が必要になるのでしょうか。本記事では、IT起業の一例として「ネットショップ開業」した場合に、必要な資金や環境などを考えていきます。
法人設立費用(20万円~)
「ネットショップ開業」においては今や副業OK企業も増えつつある潮流もあり、サラリーマンや主婦が個人事業主として副業スタートからでも始められる方が増えていますが、やはり一事業として企業との取引を行う場合には、信頼性を保つためにも「法人設立」は必須です。
「個人事業主 VS 法人」はどちらが良い?
海外取引(海外から商品を仕入れる場合など)の場合、海外事業者は企業形態をとりわけ重要視していないことが多い(個人事業主でも全然OK)ので、最初は個人事業主として屋号を登記して事業を開始するのも1つの手です。ただし、国内取引の場合は、表面を重んじる傾向が強く、取引をスムーズに進めさせるためにも、最低限「法人成り」はさせておくことをオススメします。
「株式会社は1円でも設立できる」ということはよく言われますが、これはあくまで理論上の話。一般的には定款作成、認証、法務局への届出など専門家に依頼することになり、登録免許税、収入印紙などを含めれば、およそ20万円程度はかかることが一般的です。
ちなみに会社設立の際は、ほとんどの場合税理士事務所と顧問契約を結ぶことになると思いますが、その際法人登記後1年の顧問契約を条件に「手数料0円で法人設立」をしてくれる事務所も多いです。ただし、当然のことながら月額の顧問手数料(約1~3万円)は、法人設立費用20万円の金額とは別の金額なので注意しましょう。
また、法人設立の際は以下の費用も別途かかることになるので注意が必要です。
- 法人印鑑(15000円~)
- 事務所費用(0円~。自宅を登記住所にしてもOK。経費は使用面積分で按分する)
- 固定電話(月額0円~。格安の050番号利用でOK)
- 税理士顧問料(最低10000円~。別途、決算時期に7~8万円が一般的)
法人印鑑は「法人用銀行口座」「法人クレジットカード」などを発行する際に必要です。また、印鑑証明の登録など「登記簿謄本」や「印鑑証明書」を発行してもらう際にも必要になってくることがあります。法人印鑑は基本的にどこで作成しても構いませんが、印鑑のハンコヤドットコムなど3本セットのものを購入すると良いでしょう。
最初は「せっかく法人設立だから!」といって良い判子が欲しくなりますが、ピンきりで高額なものも多いので余裕のある範囲内で購入しましょう。
法人に限らず、個人事業主であっても屋号の登記住所は必要になります。その際、自宅(賃貸も可能)を登記住所にすることはできますが、万が一事業トラブルによって大家さんとの関係などがこじれる可能性は0ではないので、その場合は「バーチャルオフィス」を利用すると良いです。
「バーチャルオフィス」とはその名の通り、登記住所として使える住所を貸し出ししてくれるサービスです。ネットショップを運営するとなると、特定商取引法の開示が必要になりますが、自宅住所は現在Googleマップなどでも確認できてしまいますし、それが一軒家であれば、一般消費者からは一企業としての信頼性が疑われやすいです。
そのため、バーチャルオフィスを利用して「東京渋谷区」などの住所をレンタルすれば、詮索されにくかったり「ちゃんとした企業なんだな」と思われやすいんですね。必要があれば、こういったサービスも利用することをオススメします。
固定電話は050番号が利用できる「050plus」がオススメです。携帯電話(080番号)でも登記はできると思いますが、公私混合になりがちでいざというときの電話が、取引先なのか知人からなのか分からなくなってしまいます。資金に余裕があれば、事業用の格安携帯を用意するのもアリです。(もちろん、事業用の固定回線を敷いてもいいですが、固定回線だとその場でしか使えないので融通が利きません。結局携帯用の電話番号が必要になるので、050番号でまとめておくと良いと思います)
ネットショップ開業(最低限必要なもの)
ネットショップ開業には最低限以下のモノが必要になります。
- パソコン
- インターネット回線
- プリンタ
- 商品撮影用カメラ(0円~。スマホ搭載カメラでもOK)
- 商品撮影用機材
上の3つはもともと持っている方も多いと思いますが、事業用として持つのであれば、いずれもスペックの高いプランを選ぶようにしましょう。パソコン1つにしても、CPU2GBのカクカクしか動かないPCではなく、最低CPU8GBのSSD搭載パソコンを持つとサクサク仕事ができるようになります。インターネット回線は光回線で高速のもの、プリンタは近年ペーパーレス化が進んでおり、必要になる機会は多くはありませんが、何かと必要な場面に遭遇するので必ず持っておきましょう。
商品撮影用カメラについては、近年ではスマホに搭載されたカメラでも十分ですし、撮影用機材も工夫すれば最寄りのホームセンターなどで撮影用機材を手作りすることも可能です。ただし、売上が上がってきたら商品撮影はプロに任せることが一般的なので、最初からプロに任せる場合は揃える必要はないでしょう。
ただし、プロに任せれば撮影指示を詳細に行わなければならないですし、食品関連、ハンドメイド商品など一部の商品によっては、プロ撮影ではなく「素人撮影っぽく」した商品画像のほうが売れるケースもあります。ご自身で撮影を行うのであれば、多少の撮影知識は必要なので「株式会社グッドアピールさん」の写真講座など受講すると良いでしょう。
ネットショップ開業(必要なサービス)
ネットショップを開業するとなれば、ネットショップ開店のためのサービスが必要と思われますかもしれません。
2. ドメイン(年間1000円~)
3. ショッピングカート(カラーミーショップ、Makeshop、WooCommerceなど)
4. 決済システム(PayPal、銀行振込、代引き決済、後払い決済)
5. メールシステム(ショッピングカートに付随)
6. 受注管理システム(ショッピングカートに付随)
7. 顧客管理システム(ショッピングカートに付随)
8. 商品・在庫管理システム(ネクストエンジン、TEMPOSTARなど)
「なんだか聞きなれない言葉ばかり…、難しそう…」と思われるかもしれませんが、あなたが契約しなくてはならないのは(ほとんどの場合)1と2の2つだけです。3~8は1つのサービスに含まれていることがほとんどですし、あなた自身が用意しなくてはいけないものではないので安心してください。(大手通販カートシステムが豊富な機能性を謳うために一見多くの機能性を誇示しているだけです)
ちなみにAmazonや楽天、Y!ショッピングに出店する場合は、上記のいずれも自身で契約する必要はありません。(つまり事業者で個別にサービス契約する必要はありません。だからこそ、参入障壁が低く、初心者にはオススメと言われていますね)
上記はカラーミーショップ、WooCommerce、Makeshopなど、独自ドメインでネットショップを作りたい場合にのみ必要なものですが、いずれを契約しても月額1200円~程度で済みますので、Amazon、楽天、Y!ショッピングよりも圧倒的にランニングコストを抑えることができるでしょう。
ネットショップ開業(その他の費用)
ネットショップ開業時には、その他にも複数費用がかかります。
- ホームページ作成費(外注費用:約5万円~)
- バナー制作、商品画像制作費(外注費用:約3000円~)
- 梱包資材(段ボール、梱包用テープなど)
- 画像編集ソフト(Photoshop、Illustratorなど)※無料のものでもOK
- プリンタ用インク・トナー又は用紙などの消耗品
- 広告宣伝費(Google広告、SEO対策費用など)
- 光熱費(電気代)
Amazon、楽天市場のようなモール型出店であれば、ホームページ制作費は不要です。商品画像制作であれば、ご自身で行えば無料ですので必ずしも上記の費用がかかるというわけではありません。また、「独自ドメインのショップ運営を始めたい」という方も、ショップ用テンプレートを利用すれば、ホームページ制作費用をかけずに開業することも可能です。
また、「物流代行サービス」を利用すれば、自宅へ商品在庫を保管しておくスペースも不要ですし、梱包資材をご自身で集める必要もないのでオススメです。開業当初は、受注~発送までの流れを理解するためにご自身で作業されもいいですが、梱包作業を10回もやれば把握できると思うので、早急に物流代行サービスに業務委託するようにしましょう。
「OPEN LOGI」のように初期費用、月額費用無料がかからない物流代行サービスも出てきているので、これからネットショップ開業する方は使わない手はありません。
ネットショップ開業に必要な資金
法人設立を考えなければ、すべての費用を考えても「月額1200円程度~」でネットショップを運営することができます。(最近では月額費用0円から始められるネットショップサービスもありますが、機能性が不十分で売れるショップ作りができないのでここでは割愛します)
しかし、ネットショップ運営するだけでは意味がありません。売上を上げるために真っ先に必要なモノといえば、やはり「在庫」。つまり「商品」です。一部「売れてから仕入れる」という無在庫販売モデル、ドロップシッピングモデルも存在しますが、売上の天井が数百万円程度と低く、利益率も低いため結局「がんばってもお金が増えない!」「新規商品に回せる予算もない」という悪循環に陥ってしまいます。これらのビジネスモデルでは、専業でやっていけるほど利益を出すことは難しいのです。
ちなみに、当サイトでは独立起業のタイミング目安を「月利100万円」を推奨しており、仮に月利100万円を目指そうと思うと、以下のようなシミューレーション例になります。
ネットショップ開業における売上シミュレーション
・売上:300万円
・仕入原価:170万円
・広告費:30万円
・粗利:100万円
・利益率:33%
※わかりやすいように簡略化した数字を使っています。
上記は比較的上手くいっているネットショップの売上シミュレーションです。このケースでは、月利100万円を目指そうと思ったら、仕入れ原価170万円+広告費30万円の「200万円」の資金が必要ということになります。また、通常「発注から商品到着」までの期間、又は売上金の回収には時間がかかるので、毎月100万円の利益を安定して出そうと思ったら、実質この2~2.5倍(400~500万円程度)の資金を持つことが理想とされています。(IT起業といっても、意外とお金がかかるんですね)
なお、ここで言う「粗利」とは、「事業者の給料(役員報酬)」などは含めず、単に「売上高-売上原価」を計算したものです。
なお、「税金を考慮しても月間残高が毎月70万円プラスになれば、もっと早いタイミングでも独立OKなんじゃ?」と思われるかもしえませんが、当サイトが推奨する独立のタイミングとしてわざわざ「100万円の粗利」としたのは、生活費(例:月間30万円)と税金を考慮すれば、事業の必要資金として毎月プラスになるのは、わずか30万円~40万円になるからです。
30~40万円の仕入れ資金で売上を上げられるとすれば一般的には60~80万円程度なので、売上規模が順調に上がっていったとしても半年~1年程度はかかります。なお、売上規模が大きくなればなるほど、通販ビジネスには棚卸額のコントロールや不良在庫もでがちなので、数字上では最終利益で30~40万円であっても、通帳残高の金額はこれ以下になる傾向があります。
ネットショップ開業の適正タイミング
「ネットショップ開業」のポイントを以下にまとめてみましょう。
- 法人化のタイミングは、取引先が国内か海外による
- 独立タイミングは、月間粗利100万円以上になったとき
- 運転資金は、月間仕入れ原価の2~2.5倍が理想
こうしてみると「ネットショップ開業」にもある程度の資金的条件があることが好ましいことが分かります。これはあくまで「通販ビジネスにおいて好ましい条件」として、当サイトが推奨する条件ですが、仕入資金はクレジットカードで代用したり、少ない資金でキャッシュが回せるようにキャッシュフローの良い決済サービス(銀行決済、Amazonログイン&ペイメント等)を使うなど工夫することもできます。
正直なところを言うと、ネットショップで売上300万円は決して達成できない目標ではありません。正しい商材選定と集客方法、販売戦略を身につければ、多くの方が達成できる数値です。しかも、今は昔のように会社設立に1000万円はかからず、カメラはスマホが代替し、多くのWebサービスは無料で使用できるようになりました。
本記事では「ネットショップ開業~独立」までの期間を総合的にまとめてご紹介していますが、副業OKな大手企業も増えている昨今では、ネットショップは今すぐにでも始められる魅力的なビジネスの1つであることは間違いないでしょう。あなたはいつネットショップ開業をしますか?